爛漫乙女selection -pain-

目を凝らす。深奥を見つめれば見つめるほど、ひびの入った硝子、壊れた痛み。

発行元:菊池とおこ【瞳光舎】

爛漫乙女selection -pain- 詳細

言葉のエンターティメントサイト「裸言」に連載された掌編・自選集。
sweet編、better編、pain編をお届け。<完結>

爛漫乙女selection -pain- 目次

電子ブック内テキスト

真四角な白い部屋の真ん中でわたしはあなたの呼ぶ声を待つているわたしは知つているあなたがわたしを呼べばわたしはこの部屋を出られるのだとだからわたしはただひたすらにあなたの呼ぶ声を待つているBRもうどれだけ長いことあなたの声を待つているのだろうあまりにも長いのでわたしは過ぎた時を忘れてしまつた部屋の中空にはいつも15分だけ進んだ時計が掛けられていてかちこちと時を刻むけれどもそれは長い針と短い針の永遠の追いかけつこを演じているに過ぎなくて跡には何も残さない時はいつもただ緩慢に流れ去るだけだBRわたしはあなたを呼ぶことができないわたしの声は取り上げられているわたしは声を出さないよう命じられているわたしができるのはあなたの声を待つことだけBRこの真四角な白い部屋は微かにそして非常にゆつくりと脈動するその脈動に併せてわたしはあなたに近づきまた遠ざかるその満ち干きそれに併せてわたしは期待しそして失望する部屋の真ん中で固く膝を抱え胸に顔を埋めたままでBR最後にあなたの声を聴いたのはいつだつただろうそれはあまりに遠い記憶でその遠いがゆえにわたしの胸を締め付けるBR外に出たいからじやないあなたの声が聴きた