爛漫乙女selection -bitter-

ふと、立ち止まり、振り返る。そこにあるのは、ほろ苦い追憶、朧な記憶。

発行元:菊池とおこ【瞳光舎】

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言葉のエンターティメントサイト「裸言」に連載された掌編・自選集。
sweet編、better編、pain編をお届け。<完結>

爛漫乙女selection -bitter- 目次

電子ブック内テキスト

IMGSRCIMAGESCOVERJPGSTYLEWIDTH100つつじが濃いフクシアの花を開く頃になると僕は叔母のことを思い出す二十年前まだ三十二歳の若さで逝つた叔母のことをあの頃僕は小学校一年生で両親共に働いていたため放課後のほとんどの時間を叔母の同居している母方の祖父母の家で過ごしていたBR叔母は今で言うニートだつた自室としていた二階の六畳間で昼過ぎまで布団にこもつていた僕が叔母の部屋にそおつと顔を出すと薄ぼんやりとした目を大儀そうに開き拓酒持つてこいと命じた僕はどこか誇らしげな気分になりながら叔母の酒を取りに走るのだつたBR叔母は酒の好みがうるさくて祖父が飲む地元の蔵元の清酒ではだめで好みの蔵元からわざわざ取り寄せた1本をちびりちびりと味わいながら飲むのだつた叔母の酒は芳香がした甘く瑞しい麹の匂いがしたとはいえ飲むかと差し出されたぐい呑みをなめると子どもの舌には苦く渋くとうてい美味しいとは思えなかつたのだけれどBR叔母は詩人だつた正確に言うと詩集を一冊出したことがあつたそれは叔母に言わせれば退廃的で自堕落で天に唾吐くような最低の詩集なのだつたがそんな詩の数を酒を飲みがてら傍にい